2019/11/17
これは久々に大事件といっていいのではないだろうか。ついに嵐の楽曲がストリーミング解禁された。10月9日に第一弾として過去の楽曲5曲が先行して解禁されていたが、11月3日にリリースされた新曲「Turning
Up」からは全シングルが解禁。しかも、オフィシャルのYouTubeチャンネルまで開設したことで大きな話題を呼び、各音楽サービスのチャートを席巻している。
ビルボードのHot100でも、「Turning Up」はダウンロードのみ集計された先週は10位、そしてストリーミングと動画の再生回数を加味した今週は2位にまで上昇している(【表1】)。惜しくも同タイミングのリリースとなったNMB48に首位は渡してしまったが、今回の「Turning Up」はデジタル・オンリーでフィジカルのCDはリリースされていない。そう思えば、これまでにない展開と結果となっている。そして、この戦略は今後大きな変化を生む可能性があるだろう。
ジャニーズといえば、ウェブ上で検索しても楽曲が聴けないので、CDの購入やレンタルをするか、歌番組に出演するのを待つなど、能動的でないとなかなか聴くことができなかった。コアなファンならともかく、グレーユーザーにとってはそこまで追いかける対象ではなかったのではないだろうか。しかし、今回のストリーミングとYouTubeの解禁により、熱心なファン以外も気軽にアクセスして彼らの楽曲を耳にする機会が増えるはずだ。そうなると、単にアイドルとしてではなく、音楽的に評価して聴き始めるファンも少なからず増えるだろう。実際、嵐の楽曲制作には優秀なクリエイターを揃えているし、ラップを交えるなど洋楽のエッセンスを取り入れた質の高いものが多い。そういう評価が定着すれば、音楽性主体で聴くリスナーもいるだろうし、多角的な魅力を持つ「世界に一つだけの花」のような化け物級のロングヒットが生まれる可能性も高くなる。
今回の嵐の英断は、相当勇気のあることだっただろうが、これを成功と見るならば、今後ジャニーズの他のアーティストもどんどんストリーミングに参戦するはずだ。また、フィジカルのCDを組み合わせて戦略的にリリースをすれば、ヒゲダンやあいみょんのような配信系ロングヒットのアーティストもうかうかしていられない。これからもジャニーズがストリーミングを戦場にどのような展開をしていくのかは、ぜひ注目していきたいと思う。Text:栗本斉
栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
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